夜の筋トレは寝る何時間前までOK?睡眠の質を守る時間管理まとめ

宅(タク)

「夜に筋トレしたら眠れなくなるって本当?」「就寝前に追い込みたいけど、睡眠の質が心配…」

このような疑問を抱える方は多いのではないでしょうか。

仕事終わりの時間しかトレーニングに使えないという人も少なくありませんが、就寝直前の高強度トレーニングは睡眠に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、

  • 筋トレが睡眠にどのように影響するのか
  • 眠りにつくどれくらい前に筋トレを終えるべきなのか

について、信頼できる研究の結果をもとに解説します。

就寝前の高強度筋トレは睡眠にどう影響するのか

交感神経の活性化により寝つきづらくなる

筋トレのような高強度の運動を行うと、自律神経のうち交感神経が優位になります。このことで、心拍数や血圧が高まり、身体は覚醒状態に保たれます。

このような状態では、リラックスして眠りにつくのが難しくなり、自然な入眠が妨げられる可能性があります(Leota et al., 2025[※出典は記事の最後に掲載している学術論文])

また、筋トレによって生じる次のような体の変化も、睡眠に影響を与えることがあります。

  • 入眠ホルモンであるメラトニンの分泌の仕方への影響(Buxton et al., 1997[※])
  • 筋トレ後に生じる深部体温の上昇
MEMO
通常、入眠前には深部体温がゆるやかに下がることで眠気が高まりますが、筋トレ後は一時的に上昇し、この体温のリズムが乱れることがあります。

中途覚醒など睡眠の質が低下する可能性がある

夜遅くに高強度の運動を行うと、寝つきが悪くなるだけでなく、睡眠中に途中で目が覚めやすくなる(中途覚醒)など、睡眠全体の質が低下することもあります。

実際に、トレーニングによって、睡眠中の心拍数の上昇や自律神経の乱れが観察されたという報告もあります(Myllymäki et al., 2011[※])。

睡眠を妨げないために筋トレは寝る何時間前までに終えるべきか

高強度トレーニング後、自律神経が平常に戻るまでには時間がかかる

自律神経には、交感神経副交感神経の2種類があります。前者は活動・緊張状態をつかさどり、後者は休息・回復を担当します。

日中の活動では交感神経が優位になり、夜にかけて徐々に副交感神経が優位になることで、心と体が休息モードに切り替わっていきます。ところが、筋トレによって交感神経が過度に刺激されると、この自然な切り替えが妨げられ、眠りづらくなるのです。

しかも、トレーニング終了後すぐに交感神経の働きが収まるわけではありません。例えば、夜遅くの高強度運動は、睡眠中の初期3時間における心臓の自律神経制御に影響を及ぼす可能性があると示されています(Myllymäki et al., 2011[※])

就寝の4時間前までにトレーニングを終えるのが望ましい

約15,000人を対象に1年間にわたって行われた別の研究では、夕方以降の運動、とくに高負荷な運動は、その後の睡眠や夜間の自律神経機能を乱す可能性があることが示されています。

そのため、睡眠の質を高めたい人にとっては運動は就寝の少なくとも4時間前までに終えることが推奨されています(Leota et al., 2025[※])。

また、多くの研究をまとめた報告(Stutz et al., 2019[※])によれば、就寝の1時間以内に終了するような激しい運動の場合には、入眠までの時間が長くなり、総睡眠時間や睡眠効率が低下する可能性があることも確認されています。

これらを踏まえると運動から睡眠までの時間は理想的には4時間以上、少なくとも1時間以上は間を空けることが大切と考えられます。

筋トレによる睡眠への影響を抑えるための工夫

副交感神経を優位にする行動で、身体をリラックス状態へ戻す

筋トレ後にしばらく交感神経が優位になるのは自然なことですが、眠りにつく前には副交感神経が優位になるような行動を心がけることが重要です。

以下のような方法は、副交感神経を活性化し、リラックス状態へと導いてくれます。

  • 軽めのストレッチやヨガ
  • ぬるめのシャワーや入浴
  • 照明を落とし、静かな環境で過ごす

時間が遅くなる場合は、運動内容を調整する

どうしても夜遅くしか筋トレの時間がとれない場合には、以下のように運動内容を軽くする工夫をしてみましょう。

  • 自重トレーニングなど、負荷を軽くする
  • ストレッチや軽い有酸素運動に切り替える
  • トレーニング時間を短縮し、回復の時間を確保する

まとめ

内容のおさらい

夜に筋トレを行う場合は、次の点を守ることで睡眠の質を保ちやすくなります。

  • 高強度トレーニングは、就寝の4時間前までに終える
  • クールダウンや入浴などで、副交感神経を優位にしてリラックス状態に導く
  • 夜遅い時間は、トレーニングの強度・時間を調整する

出典

  1. Leota, J., Presby, D. M., Le, F., Czeisler, M. É., Mascaro, L., Capodilupo, E. R., … & Facer-Childs, E. R. (2025). Dose-response relationship between evening exercise and sleep. Nature Communications, 16(1), 3297.
  2. Buxton, O. M., L’Hermite-Balériaux, M., Hirschfeld, U., & Van Cauter, E. (1997). Acute and delayed effects of exercise on human melatonin secretion. Journal of Biological Rhythms, 12(6), 568-574.
  3. Myllymäki, T., Kyröläinen, H., Savolainen, K., Hokka, L., Jakonen, R., Juuti, T., … & Rusko, H. (2011). Effects of vigorous late-night exercise on sleep quality and cardiac autonomic activity. Journal of Sleep Research, 20(1), 146-153.
  4. Stutz, J., Eiholzer, R., & Spengler, C. M. (2019). Effects of evening exercise on sleep in healthy participants: A systematic review and meta-analysis. Sports Medicine, 49(2), 269–287.

宅(タク)

睡眠は筋肉の回復・成長に不可欠。夜の筋トレでは、交感神経と副交感神経のバランスを意識して、睡眠の質も大切にしていこう!