トレーニングの後は超回復で強くなる。
よく語られる考え方ですが『実は嘘なんだよ?』『いやいや学校で習ったから本当だ!』
など正しさが議論される内容でもあります。
そこで本記事では、
- 超回復の嘘と本当を研究や経緯に触れつつ整理
- 正しい超回復の理解をもとにした、正しいトレーニングの組み方をまとめる
についてまとめます。
宅(タク)
- 筋トレによるダメージからの回復で元レベルより筋肉が強くなる
- 筋トレ後48~72時間で、元レベルより筋肉を動かすエネルギーが高まる
- 筋トレ後48~72時間で、元レベルより筋肥大する/筋力がアップする
タップできるもくじ
超回復とは?
宅(タク)
超回復には定義がない?
トレーニングをしていると必ず聞く超回復理論。ですが、実は超回復の考え方にはいくつかあり1つの定義というものはありません。
一般的に言われる超回復の考え方と2つの注意点
そこで厚生労働省とWikipediaを出典として、超回復の一般的な意味をもとに定義を考えてみます。
筋肉はレジスタンス運動を行うと筋線維の一部が破断されます。それが修復される際にもとの筋線維よりも少し太い状態になります。これを「超回復」と呼び、これを繰り返すと筋の断面積が全体として太くなり筋力が上がります。
筋力のトレーニングはこの仕組みを利用して最大筋力に近い負荷でレジスタンス運動し、筋が修復されるまで2~3日の休息ののち、またレジスタンス運動でトレーニングということの繰り返しによって行われます。(厚生労働省 e-ヘルスネット)
トレーニングする時の人間の体力は4つのレベルに分けられる。すなわち、トレーニング前、トレーニング中、回復期間、そして「超回復」期間である。トレーニング前の状態では、トレーニングの対象となる部位は基礎レベルの体力を持っている。トレーニングを行うと、トレーニングを行った部位の体力レベルは下がる。トレーニング後、体は回復期間に入り、体力は基礎レベルにまで増加していく。人体の調整機能により、次のトレーニングを見越してもっと高い体力を持つ必要性を、人体の組織は自ら理解するので、人間の体力は基礎レベルに達しても回復が終わらず、さらに増加する。その時点から、人間の体力は基礎レベルを超えた「超回復」の期間に入る。(wikipedia)
簡単にまとめると「トレーニングをすると筋肉が一時的に弱くなるが、その後、48時間から72時間かけて元よりも強くなる」という考え方です。
サラっと読むと間違っていなさそうなのですが、実は嘘が潜むポイントが2つあります。
- 超回復を受ける対象がどこまでか「筋肉が強くなるってどういうこと?」
- 超回復の期間はどの程度か「48~72時間」
超回復の嘘&本当
超回復論で語られる「筋肉が強くなる」という箇所についてもう少しかみ砕いて考えてみましょう。
筋肉が強くなるとは、およそ
- 筋肉の出す力が強くなる(筋力アップ)
- 筋肉が大きくなる(筋肥大)
- 筋肉に蓄えるエネルギーが増える(スタミナアップ)
といった意味です。
このうち超回復で言われる48~72時間で元より強くなる、と複数の研究で明らかになっているのは、3つ目の「筋肉に蓄えるエネルギー」のみです。
筋肉の出す力や筋肉サイズがトレーニング後48~72時間でアップするという研究根拠は乏しく、ここが超回復の嘘です。
宅(タク)
海外研究論文の誤訳で広まった考え
なぜ、「トレーニングで傷ついた筋肉が2~3日でもとより強くなる」という誤った考え方が広まったのでしょうか。
実は、原因は海外論文の誤読とされます。
海外でglycogen supercompensationというテーマで研究がされていたのですが、これを一昔前の日本のトレーニング雑誌が取り上げる際に、意味を拡大解釈してしまったのです。
筋肉自体ではなく筋グリコーゲン(エネルギー)の超回復
ここでポイントなのが、元の研究「glycogen supercompensation」では、筋グリコーゲン(glycogen)を対象としているということ。
グリコーゲンは筋肉が蓄える糖分のことで、いわゆる筋肉を動かすためのエネルギーのことです。
宅(タク)
つまり、超回復の元なった研究では、筋肉に蓄えるエネルギーの増減を示したもので筋肉そのものには触れていないのです。
ハードなトレーニング等で筋肉中のグリコーゲンを一度枯渇させると、トレーニング数日内は通常よりも筋肉にグリコーゲンを蓄えられる総量が増える。
これが元の研究のおおよその意味合いで、マラソンやなどの持久系スポーツで試合当日のスタミナを一時的に増強させるテクニックとして広く知られます。
筋肉もサイズアップするが一時的なもの
一方、筋グリコーゲンの超回復の際、筋肉がグリコーゲンを取り込む総量が増えると同時に水分も取り込むため、筋肉が膨張して一時的にサイズアップします。
このことから、試合で体を大きくさせるためにボディビル界でもテクニックは活用されて、流行りました。
とはいえ、ここで言うサイズアップは一時的なもので筋繊維そのものが太くなったわけではありませんし、筋力が増強されるわけでもありません。
この辺りが、いつしか誤読/拡大解釈され「筋トレ後2~3日で傷ついた筋繊維が超回復する」という今の超回復理論につながってしまったものと思われます。
「毎日の筋トレで超回復期間が取れずに筋肉が落ちる」は嘘
ちなみに、超回復理論を引き合いに出して「毎日トレーニングをすると超回復が間に合わないので逆効果。筋肉が減る」といわれることがあります。
ですが、これは完全なる間違いです。
宅(タク)
超回復に必ず2~3日要するのであれば、毎日現場仕事をしている人はオーバーワークでどんどん筋肉が弱くなってしまうはずですが、そのようなことは起きえないのです。
適切な休養期間は、トレーニングの目的やメニュー(強度やボリューム)をもとに、決定するべきで一概に2~3日休むのを正しいと思考停止するのは完全な誤りです。
「休息を経て筋力が高まる/筋肥大する」という考えは正しい
一方、元の2~3日でという部分を除けば、筋トレ後に適切な休養を経て筋肉が大きく強くなるという、超回復理論の大枠の考え方は正しいです。
実際、休養⇔トレーニングを繰り返して徐々に筋肉をつけていくという考え方は、トレーニングの原則においても前提としてとらえられています。
宅(タク)
- 漸進性の原則(トレーニングの効果を得るためには、徐々に負荷を強くしていくべし)
- 反復性の原則(トレーニングの効果を得るためには、何度もトレーニングをすべし)
明文化こそされていないものの、この辺りに超回復の考え方が現れていますね!
筋トレ効果を最大化する休養期間/筋トレ頻度の考え方
超回復の関連で皆さんが一番気になるのは、筋トレ頻度のことだと思います。
しかし、これまでの話から、超回復理論をもとに2~3日の休養を取るのが適切と一概に決めるけるのは誤りだとお伝えしました。
では、どういった考え方で筋トレ頻度を考えるべきなのでしょうか。
超回復理論のふりかえり
まず、超回復理論の正しい部分について改めてまとめます。
- トレーニングでの負荷⇔休養による筋肉の成長を繰り返して、筋力アップ、筋肥大、筋持久力をしていく
- 2~3日で超回復するのは、筋肉中の筋グリコーゲン増加による筋持久力だけ
- 筋肥大や筋力アップに適した回復期間は明確には定義されない(2~3日で超回復するというのは誤り)
宅(タク)
頻度よりもトレーニングボリュームが重要
結論から言って、筋肥大を目的に据えるのであれば、頻度はそこまで重要視する必要はありません。
というのも、最近の研究では、週あたりのトレーニングボリューム(上げたウエイトの総量)が筋肉のサイズアップに最も影響を与えるという考え方が主流となっていて、トレーニング頻度の違いによる影響は少ないとされているからです。
週2回以上のトレーニングがおすすめ
参考情報として、過去には、
- 週2回以上のトレーニングが効果的
- 週3回以上は効果に差異はなし
という論文が支持を集めていました。
また、週に1日で十分なトレーニングボリュームを稼ぐのは実際のところかなり困難です。そう考えると、週に2度はトレーニングを取り入れた方が望ましいかもしれません。
部位によっては毎日筋トレしてもOK
また、小さい部位の筋肉については比較的回復が早いため、高い頻度で筋トレをするのが望ましいとされます。
特に、自重トレーニングで腕や腹筋などは毎日トレーニングをしても良いかと思います。
アクティブレストで回復を早める
また現在は、トレーニングをしない日でも、アクティブレストといって軽い負荷の運動をした方が回復は早いという考えが主流です。
宅(タク)
最後に
これまで見てきた通り、超回復は、学術的には根拠が薄い概念です。
一方で「無理なく効果を見込みつつ、現実的なメニューを組む」そう考えると、「2~3日ごとに筋トレ」という超回復理論に近しい頻度に多くの人が落ち着く気がします。
宅(タク)